背景・課題
世界的なEV・蓄電シフトを背景に、二次電池電極の品質検査ソリューション需要は急速に拡大中です。
電極塗工膜のわずかな欠陥も電池性能や安全性に直結するため、「高精度」「全数」「リアルタイム」という条件を満足する検査装置の導入が急務となっており、また、製造現場では「省人化」「高速化」「スマートファクトリー化」が進む中、高精度な自動検査装置の貢献度は一段と高まっています。
装置概要
本装置は、光の反射特性を利用して電極シート表面の状態を高精度に計測する先進的な光学センサです。
同じ素材でできている製品でも、製造工程や品質に起因する差異が、表面の光沢や微妙な色の違いとして現れる場合があります。
本装置を使用することで、こうした製品自体のごく小さな状態変化や問題が、光の反射や色差となって検知可能です。
これらの違いはCIELAB値として定量化でき、より高度な品質管理が行えます。
電極シート塗工工程
リチウムイオン電池では、電極シートが電池の性能に大きな影響を与えます。
電極シートは、集電箔上にスラリーを塗工し、乾燥させた後、プレス工程によって膜厚や圧密度を調整して製造されます。
特に、塗工の均一性とプレス工程による膜厚調整が、電極シートの品質を左右する重要な要素です。
塗工の均一性が確保されていない場合、電池内部での活物質分布にムラが生じ、容量や出力特性のばらつきの原因となります。
また、プレス工程によって適切に圧密化されることで、電極の体積エネルギー密度や機械的強度、イオン・電子の輸送特性が最適化されます。
したがって、高性能で信頼性の高いリチウムイオン電池を製造するためには、高品質な電極シートの製造が不可欠です。

計測事例
本装置では、電極シート表面に塗工された塗工膜(活物質、バインダー、導電助剤)がプレスされ圧密化された状態を、光の反射特性を用いて非破壊で計測することが可能です。
具体的には、プレス前の状態では活物質粒子間に多くの隙間が存在するため、照射された光が内部へと多く侵入し、外部へ反射される光の量(反射光強度)は小さくなります。
一方、プレス後には活物質間の隙間が圧縮されて狭くなり、光が内部に吸収されにくくなるため、表面で反射される光の強度が大きくなります。
このような光反射特性の変化を定量的に捉えることで、従来はオフラインで電子顕微鏡を用いて確認していたプレス状態の違いを、リアルタイムかつ非破壊で評価することが可能となりました。
実際にRSCIMによる計測結果では、プレス前後で明確な反射光の差異が得られており、電子顕微鏡による分析と同等の傾向が確認されています。これにより、工程管理や品質保証において、より効率的かつ安全にプレス状態の評価を実施できます。


塗工工程においてギャップ調整が適切に行われない場合、左右で塗工量に差異が生じ、これが電極シートの品質低下の原因となります。
そのため、高品質な電極シートを安定して製造するためには、塗工状態の精密な計測が不可欠です。
従来、目付量管理にはβ線を利用した計測装置が一般的に用いられてきましたが、放射線を扱うことから厳格な安全管理が求められるのみならず、導入費用や維持費用も非常に高額です。
一方、目視による外観評価では塗工状態が均一に見える場合でも、RSCIMによる計測では微細な色差を精度高く捉えることができ、わずかな塗工ムラもしっかりと検出できます。
さらに、RSCIMは光の反射原理に基づくため、放射線を使用せず安全管理面での負担がなく、設備コストも従来のβ線計測装置に比べて大幅に低減できるという大きなメリットがあります。
